積層する記憶と身体
展示を締めくくるのは、土、水、マスキングテープなど身近な素材を用い、あらゆる場所に奔放に絵を描き続ける淺井裕介だ。
淺井は、各地で採取した土と水で描く「泥絵」シリーズ、アスファルト道路に用いられる熱溶着式路面標示シートをバーナーで焼き付けて描く「白線」シリーズ、マスキングテープに耐水性マーカーで描く「マスキングプラント」シリーズの3つで知られる。
高さ4メートル×幅27メートルに及ぶ《大地の譜面 足音の音楽/今ここで土になる》(2025)は本展のコミッションワーク。約100名のボランティアとともに約1ヶ月をかけて制作したこの作品は、能登半島を中心とした石川県の65種類もの土を使用。80色以上の土の絵具によって、生命の躍動が美術館の壁に生み出された。土の絵具でできた絵画は、積層する時間と私たちをつなぐ象徴的なものとなった。

