第2章「イメージと咆哮」
昭和・平成・令和と、各時代において、私たちに衝撃を与えるとともに、何らかの意識を喚起し続けてきたゴジラ。それは姿を変えながらも、ひとつのアイコンとして複製されてきたとも言える。ここでは、版画と写真という複製芸術からゴジラが生み出す視覚体験に迫る。
風間サチコは、木版画とそれをもとにしたアニメーションの題材として、第五福竜丸の被爆や福島第一原発事故を取り上げ、寓話的世界のなかにゴジラの存在と核や戦争に対する問題を提起する。
今年、92歳を迎えた川田喜久治は、フランシスコ・デ・ゴヤが戦争と人間の残酷さを告発した版画集『ロス・カプリチョス』にことよせたシリーズを展示。1960年代から2025年に撮影した写真を、未発表作品を含めて再構築した本作は、何気ない日常や都市を切り取った場面のなかに、不穏なゴジラの気配を漂わせる。

可視と不可視の対照的な作品ながら、ふたりの作家はオリジナリティと複製されるイメージとの関係を問いつつ、ゴジラへのイマジネーションを強く想起させる。