第3章「美しい廃墟」
ゴジラが破壊する都市の情景は、悲劇性のみならず、期待感と爽快感をもたらす。瓦礫のなかのゴジラの姿は美しくもあり、こうした「廃墟の美」はゴジラ人気のひとつの要素だ。戦後の焼け跡から高度成長により驚異的な復興を果たした日本は、バブル経済を経て、発展と停滞のなかでスクラップ&ビルドを繰り返してきた。近代建築が持っていた神話性は、自然破壊やそれに伴う災害へのまなざしに応じて力を失いつつある。その末路は廃墟化であり、私たちはそうした遺物とともに未来へと進む。ゆえにこそ、ゴジラのたたずむ廃墟の風景は強く印象づけられるのかもしれない。第3章では、「廃墟」に注目し、もしかしたら見ていたかもしれない、実在しなかった日本の風景をアーティストが表現する。
東京ビルドが、東宝映像美術とコラボレーションして制作した都市風景は、過去の風景であるとも、近未来の風景であるとも感じられ、破壊と再生という都市の持つ宿命と、それでも生きていく人間の力を改めて意識させる。経年劣化の表現やそれぞれの素材の使い分けなど、その見事なこだわりと精緻な制作に注目だ。

「この国のかたち」と語るほど、ゴジラを普遍的なテーマを持つモチーフととらえる小谷元彦。あえて人に近い姿をしたゴジラを、米兵と日本兵が融合した兵士と対峙させた。美しくも恐怖心を起こす造形に、怪獣と人間の戦いと、人間同士の戦い=戦争を重ねる。
