喜多川歌麿は、女性の多様な姿を描くことに長けた、美人画の旗手とも言える浮世絵師だ。会場には、江戸の人々の憧れの的でもあった遊女たちのプライベートな様子を描いた「五人美人愛敬競」シリーズや、女性に対する教訓が絵とともに記される「教訓親の目鑑」シリーズなどが展示されている。美しく淑やかな女性のみならず、時には悪女のような人物も魅力的に描くなど、その多面的な姿をリアリティをもって表現している点が、歌麿の大きな特徴と言えるだろう。


東洲斎写楽といえば、「大首絵」というインパクトある手法で数多くの役者絵を手がけたことで有名な人物であるが、その活動期間はたったの10ヶ月ほどしかないのはご存知だろうか。役者の美しさよりも、指先や口元の力のこもる表情など、あたかも間近で演技を見ているような臨場感をも描きだすところに大きな特徴があると言える。あまりにリアリティを追求したため当時の人々のあいだでは賛否両論があったようだが、浮世絵を語るうえで、写楽の存在を語らずにはいられないだろう。

