最後に紹介されるのは、広重と同い年で幕末に活躍した浮世絵師のひとり・歌川国芳だ。国芳といえばシリーズ作品「通俗水滸伝豪傑百八人之一個」(1827)で一斉を風靡し、その後「武者絵」のジャンルにおいてその地位を確立した。迫力ある構図や力強い描写力によって描かれた作品の数々は、いまなお老若男女に愛されているといっても過言ではないだろう。三枚続きのワイド画面を用いた作品からも、モチーフを劇的に演出しようとした国芳の工夫が見受けられる。



絵師としてのみならず、メディアとして流行の最先端をも担ってきた江戸時代の浮世絵師。新たな表現を追い続けた、この五大浮世絵師による挑戦の軌跡をぜひ会場で俯瞰してみてほしい。なお、会場には本展の音声ガイドナビゲーターを務める歌舞伎俳優・尾上松也を描いた石川真澄による《挑む》も特別展示されているため、あわせてご覧いただきたい。
