また平面作品である《グローイング3》(1988)には、ヘリングのドローイングスタイルを代表する太く均一な線が使われており、黄色と黒のコントラストが印象的だ。ヘリングの作品によく登場する単純化された人間の形が、シンメトリーな構図のなかで増殖している。

同じく鮮やかな黄色が印象的な《ジュリア》(1987)は、まるで踊っているかのような動きを想起させるいっぽうで、別の角度からは顔を下に向けたうなだれているようにも見える。立体だからこそ、その角度によって多様な側面をもっていることを感じさせる。

同じ展示室に共通点を想起させる平面作品と立体作品を共存させることで、線による表現からキャリアをスタートさせたヘリングが、三次元の表現にどう向き合ったのか、比較しながら思考を巡らせることができるだろう。