「Keith Haring: Arching Lines 人をつなぐアーチ」(中村キース・ヘリング美術館)開幕レポート。彫刻作品からみるヘリングの公共性【5/7ページ】

 続いて、2つ目の空間は、前後の展示室をつなぐ空間となっている。ここではヘリングの彫刻作品制作に関する資料などが展示されている。

展示風景より

 平面作品を当時多く制作していたヘリングは、ギャラリストのトニー・シャフラジから「君のアルファベットを風景に置いてみたらどうだ」という提案を受けたことで、1985年から彫刻作品を制作し始めた。

 制作は、アメリカ・コネチカット州「リッピンコット」という伝統的な鋳造所で行っており、そのときの写真が展示されている。この鋳造所では1966年の創業以来、ロバート・インディアナやドナルド・ジャッドなど、名だたるアーティストたちが、大規模な彫刻を制作してきた。さらに、その後ヘリング初の彫刻作品の発表は、老舗であるレオ・キャステリ・ギャラリーで行っている。「まるで聖域のような場所だった」とヘリングが表現するそのギャラリーの壁に、幼少期から描き続けてきたキャラクターを描き、彫刻とともに発表。これは格式高い美術界に一石を投じる試みだったといえる。

展示風景より、リッピンコットで初めて制作した彫刻作品
展示風景より、レオ・キャステリ・ギャラリーでひらいた個展のポスター

 87年には国際的な芸術祭「ミュンスター彫刻プロジェクト」にも出品を果たしている。自身の描いてきたモチーフを三次元化し空間に拡張させることで、絵画表現とは異なる公共性と永続性を追い求めながら、社会とのつながりも大事にしていたことが資料より窺える。

編集部

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