そして展示の最後に、本展の目玉となる、同館の新収蔵品である《無題(アーチ状の黄色いフィギュア)》(1985)が、中庭に展示されている。ヘリングの彫刻制作の出発点となった作品のひとつで、全長約5メートル、高さ約2メートルの大型作品だ。本作は完成後にニューヨークの公園などに設置され、子供が触って遊ぶことができた。当時の閉鎖的で格式張っているアート界に対して、アートの本質を問い直すヘリングの挑戦を映し出すものとなっている。開放的な中庭に設置されている本作は、天候や季節、時間などによっても見え方が大きく変わるだろう。

なお同館では、本展と同時期に、同館の建築を担当した北川原温の美術館初個展である「北川原温 時間と空間の星座」も開催中だ。同館を構成する6つの要素「さかしまの円錐」「闇」「ジャイアントフレーム」「自然」「希望」「衝突する壁」を軸に、模型や資料を通じて建築のプロセスなどを紹介する内容となっている。設計にあたって、ヘリングについての深い洞察と数々の試行錯誤を行った北川原の思考を知ることで、さらにヘリングについても深く理解することができるだろう。こちらもぜひ会期中にあわせて足を運んでみてほしい。