やがて禅僧たちから普及した茶の湯ではその理念を尊び、こうした墨蹟が床の間を飾る第一の掛物として位置づけられていく。
無学祖元の遺墨のなかでも優品とされるものは、かつて偈の前半と識語の1行目で切断されていた跡があり、床の間に合わせたことをうかがわせる。

釈迦の前世である蒋摩訶(しょうまか)が、布袋は弥勒菩薩の化身であると確信した様子を描いた画には、日本でも高僧とされた楚石梵琦の賛が揮毫されている。こうした高僧による画賛も墨蹟同様に珍重された。

画とともに書を重んじ、味わってきた日本美術のあり方をいま一度振り返りたい。
また、2階の展示室5では「特別仕様の美術品収納箱」と題し、美術品の収納のための収納箱が紹介される。きらびやかな漆芸を凝らしたこだわりの装飾が所有愛を感じさせる美しい収納箱は普段あまり展示されることがなく、まとめて見られる貴重な機会だ。「写経」コーナーで見られる《絵過去現在因果経》を収める箱も展示されているので併せて確認しよう。

