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「はじめての古美術鑑賞 ―写経と墨蹟―」(根津美術館)レポート。国宝・重文の名品で学ぶ日本の書の楽しみ方【5/5ページ】

学びのあとに:楽しく素朴な「大津絵」でほっこり

 本展と同時開催されるのが「大津絵 つくられ方・たのしみ方」。

 京都と大津を結ぶ街道の土産物として親しまれた大津絵は、おそらくはある手本をもとに、大津の庶民が見よう見まねで描き継いだ民衆絵画だ。江戸初期には仏画が主だったが、やがて美人や若衆、さらには鬼や神仏をユーモラスに描くようになる。稚拙な風合いと風刺のきいた画題がなんとも言えない魅力を持つ。鉄道が敷設された明治時代に終焉を迎えるも、柳宗悦らがとなえた民藝運動などにより再評価され、当時の文化人に盛んに収集された。

 同館の所蔵する大津絵がまとめて披露される初の展示は、大津絵を売る店先が描かれた屛風を端緒に、江戸から明治、大正、昭和とその享受のされ方の変遷を追う。

「大津絵―つくられ方、たのしみ方」展示風景より
「大津絵―つくられ方、たのしみ方」展示風景より、《伊勢参宮道中図屛風》(部分、江戸時代・17~18世紀、根津美術館蔵)。大津絵を売っている店の様子が描かれている

 主要な画題が集められた貼交屛風は、大津絵のなかでもよく描けている優品揃いといえる。

 落とした太鼓を必死で釣り上げようとする雷神、どこかへろっとした藤娘や矢の根五郎などの歌舞伎絵、「鬼の耳に念仏」を逆手に取った殊勝な鬼の姿など、思わず吹き出してしまう脱力感だ。しかし、きちんと表装され、初代・根津嘉一郎が茶会の寄付で作品を用いたエピソードなどは、高僧の墨蹟の扱いとも呼応するかもしれない。

「大津絵―つくられ方、たのしみ方」展示風景より、《大津絵貼交屛風》(江戸時代・18世紀、根津美術館蔵)
「大津絵―つくられ方、たのしみ方」展示風景より、《鬼の念仏》(江戸時代・18世紀、根津美術館蔵)

 ちなみに、先に開催された「国宝・燕子花図と藤花図、夏秋渓流図」と本展、そして次に予定されている「唐絵」展の3つの展覧会を見ると、根津美術館が所蔵する7点の国宝のうち6点を制覇できるとのこと。さて、残り1点はなにか? これは次回「唐絵」展を見てからのお楽しみに。

編集部

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