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「日本美術の鉱脈展 未来の国宝を探せ!」(大阪中之島美術館)開幕レポート。知られざる日本の美とその奥行きに触れる【4/5ページ】

 第4章では、明治から大正にかけて描かれた「歴史画」をフィーチャーしている。明治時代、政府は日本に西洋画の技法を取り入れるために各国から要人を招き入れ、国内の美術は急速に西洋化へと向かった。この国策は、江戸時代までは浮世絵版画が流行していたことを考えると大きな変革であるように思われる。

 ここでは、日本の古代神話を重厚な油画で描いた原田直次郎や高橋由一、いっぽうで旧約聖書における物語を日本画で表現した落合朗風らの作品を紹介(落合朗風《エバ》は7月8日より展示)。この歴史画というジャンルに見られた時代特有のねじれにも着目してほしい。

展示風景より、左から原田直次郎《素戔嗚尊八岐大蛇退治画稿》(1895頃)、高橋由一《日本武尊》

 第5章では打って変わって「茶の空間」について思考を巡らせる。千利休が長次郎に依頼し焼かせたという黒楽茶碗「俊寛」(重要文化財)には、利休の侘びの思想が色濃く反映されており、ふたりが目指したコンセプチュアルアートとしての「茶の湯の世界」がひとつの茶碗を通じて表現されていると言える。さらに、この利休らの取り組みへの応答として、現代美術作家である加藤智大と山口晃による「もっとも重い茶室」と「もっとも軽い茶室」も、あわせて展示されている。

展示風景より、長次郎《黒楽茶碗 銘 俊寛》(桃山時代16世紀)
展示風景より、加藤智大《鉄茶室徹亭》(2013)
展示風景より、山口晃《携行折畳式喫 茶室》(2002)

編集部

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