第6章では、狩野一信や牧島如鳩(まきしま・にょきゅう)といった、一度見たら忘れられないユニークな作品を選りすぐって展示。とくに山下が「もっとも重要な鉱脈のひとつ」であると語るのは牧島如鳩による《魚藍観音像》(1952)だ。イワシの豊漁を願って描かれたこの作品は元々福島の小名浜漁港に飾られていたが、2010年の漁業組合の解散に伴い、足利市立美術館へ所蔵されることとなったという。仏教とキリスト教といった異なるモチーフが画面上で渾然一体となっている点も鑑賞者に強烈なインパクトを与えている。



最終章では、縄文土器をはじめとする「縄文の造形」にフォーカスし、表現の原点に立ち返る。重要文化財である《深鉢型土器》を中央に据えながら、縄文の造形からインスピレーションを受けた現代作家として岡﨑龍之祐によるドレスや、西尾康之の巨大な彫刻作品など本展のための新作もあわせて展示。このユニークなコラボレーションでは、太古から現代にかけてつながりを見せる表現の在り方を目の当たりにすることができるだろう。



今回の展示作品は、国から指定を受けた作品はごく僅か。ぜひ「なぜこの作品が“未来の国宝”として選ばれたのか」といった視点でも鑑賞してみてほしい。「そもそも国宝に選ばれる基準とは何か」「自分だったらこの作品を国宝にしたい」などといった発想も、既存の概念を問い直す良い機会となるはずだ。
なお、作品によって展示される期間が異なるものもあるため、足を運ぶ際には事前に公式ウェブサイトをチェックすることをおすすめしたい。