展覧会は全5章とプロローグ、エピローグとによって構成されている。プロローグ「『浮世をえがいた絵』のはじまり」では、浮世絵とは何かを、蔦屋が生まれる前の時代を振り返りつつ、「役者絵」「浮世絵と物語」「浮絵」「美人画の発展へ」「カラー摺版画=錦絵の登場 鈴木春信の美人画」といったトピックを通じて考える。

そもそも、浮世絵とはなにか。古来より日本では、いずれ行くべき場所である浄土に対して、現世は辛く苦しい「憂世」ととらえられてきた。しかし、近世になり、現世はつかの間の「浮世」であり、だからこそこの刹那を楽しく生きようという考えが生まれるようになった。こうした世界観をもとに、富裕層向けにつくられていた風俗画は、浮世である現在を写すもの、「浮世絵」として次第に庶民に親しまれるようになっていった。
