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被爆80周年記念「記憶と物 ―モニュメント・ミュージアム・アーカイブ―」(広島市現代美術館)開幕レポート。もの、そして不在からたどる「あのとき」の記憶【3/8ページ】

 広島を象徴する施設のひとつといえる平和記念公園。この公園と慰霊碑の成立についても複雑な歴史が存在している。平和記念公園の設計を手がけたのは建築家・丹下健三であったが、丹下はその慰霊碑の設計を日系アメリカ人のイサム・ノグチに依頼している。その際にノグチが提案したのが、円筒のアーチ状のモニュメントと地下の慰霊塔という連続的なデザインだった。会場では玄武岩でできた、その5分の1サイズのデザインモデルを見ることができる。しかし本案は、広島平和記念都市建設専門委員会の反対によって、結果的に不採用になる。最終的に丹下は、ノグチの提案したアーチ状の屋根のかたちを活かし、現在の慰霊碑ができあがった。

展示風景より、イサム・ノグチによる慰霊塔の青写真と玄武岩のデザインモデル

 このような上田やノグチをめぐる様々な記憶をテーマに、「〜のためのプラクティス」シリーズを制作したのが、アーティストの黒田大スケだ。黒田は上田やノグチをはじめとした様々な彫刻家について調査し、作家に成り代わって独白するパフォーマンスを映像化。上田はヤギ、ノグチはハエといったように、各彫刻家たちは、それぞれが得意としたモチーフや逸話にちなんだ動物(ときには植物や無生物)として映像に登場する。映像に登場する彼らの発言には、ときに黒田自身の言葉も混ざり、史実と創作の交錯によって生まれるナラティヴをつくりあげている。

展示風景より、黒田大スケ「〜のためのプラクティス」シリーズ
展示風景より、黒田大スケ「〜のためのプラクティス」シリーズ

編集部

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