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被爆80周年記念「記憶と物 ―モニュメント・ミュージアム・アーカイブ―」(広島市現代美術館)開幕レポート。もの、そして不在からたどる「あのとき」の記憶【8/8ページ】

 疎開先で原爆投下の報を聞いた丸木位里と俊が、終戦後に広島の家族などから聞いた体験をもとに描いた《原爆の図》。本展で展示されているのは、アメリカでの展示を前に紛失に備えて制作された「再制作版」であり、全国を巡回して原爆の被害を戦後も広く伝えた。

展示風景より、《原爆の図 第1部「幽靈」(再制作版)》(1950)

 会場の最後に展示されているのは、小森はるか+瀬尾夏美による《11歳だったわたしは 広島編》だ。東日本大震災後の人々の語りを記録してきた小森と瀬尾は、11歳前後で体験したことが、その後の人生に大きな影響を及ぼすのではないか、という仮説にいたったという。この仮説をもとに2011年に始められたプロジェクト「11歳だったわたしは」は、広島でも展開された。現在の広島に暮らす10代から90代までの、約40名の人々にインタビューを実施。質問者と回答者という枠組みを超えた対話が繰り広げられた後、インタビュー、映像撮影、聞き書きの作成や映像編集といった制作プロセスは、すべてインタビューを受けた人々が制作者として関わった。可能な限りの「対話」に向きあうことでつくり上げられた、いまを生きる人々の「11歳」を体感してほしい。

展示風景より、小森はるか+瀬尾夏美《11歳だったわたしは 広島編》(2023-)

 多くの日本人が、教育というかたちで1945年8月6日の広島に何が起こったのかを知っている。いっぽうで80年を経たいま、それは様式として刻まれる歴史のひとつとなっていることも事実だ。本展は当時の広島にあった状況が不在であることに向き合い、語り得るあらゆるかたちを美術という方法によって探り出したものといえるだろう。

編集部

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