広島市現代美術館が所蔵するアメリカの彫刻家、ヘンリー・ムーアによる《アトム・ピース》は、その3倍の大きさを持つ彫刻作品《ニュークリア・エナジー》(1967)のワーキングモデルとされている。この《ニュークリア・エナジー》は「人類初の制御された核分裂の連鎖反応実験成功25周年を記念するモニュメント」としてシカゴ大学に設置されたが、その後広島市議会議員の抗議によって撤去されることになる。しかし本作は、科学の発展という功績とともに、そこに深い恐怖の可能性があることを含めて、制作をムーアに依頼したものだった。美術作品の解釈の多様性はときに称賛されるが、それゆえに開かれたものではなくなってしまうことも本作は示唆する。
